樋口研究室が生まれて育ってきた歴史とは?それは、、

1.樋口研究室とは何ですか?

樋口研究室の母体は、エンジニア向けの技術コミュニティです。それが時間をかけてコンピュータやヒューマン、マネジメントに関する分野で、コンサルティング、コーチング、手法や技術の検証、スキルアップのトレーニング、技術情報の発信など、お客様の知的好奇心やビジネス、プロジェクトのニーズを満たすサービスを提供するコミュニティに変化し、それを中核にビジネスを展開するスペシャリスト集団になってきました。樋口研究室の室長(代表)は、樋口節夫です。

rekishi_q01.jpg樋口研究室の発足当初のメンバーは、実際にお客様の現場でコンピュータに関する仕事に携わっているスペシャリスト達でした。

彼(彼女)らがお客さまの現場で経験した内容や、研究してきた成果をもとに、皆さんが本屋さんで買うことのできる雑誌や技術書を作成したり、お客様に対して最新のコンピュータ技術のコンサルテーション、講演会、勉強会などをおこなっていました。

そんな経緯で作られた樋口研究室が、どのような経緯で会社組織になってきたのか、インタビュアーが樋口研究室の室長・樋口研究室にインターチューする形式で、ご説明したいと思います。

ここに書かれた経緯は、これからエンジニアのみなさんが、会社の中でユニークな組織を作ったり、起業や独立する時の、参考になると思いますので、参考にしていただきたいと思います。

2.樋口研究室が発足した当初、どういう活動をしていたのですか?

樋口研究室が会社の組織になる前は、室長の樋口節夫(以下、私)の仕事は、外資系の大手コンピューターメーカーでシステム構築やプロジェクト管理、製品の開発、販売を成功させたいお客様に対して、技術コンサルティングや人材開発コンサルティングをおこなうことでした。rekishi_q02.jpg

私は自分の会社を持っていて、その名刺は持っていますが、もうひとつ別の肩書きがあり、それがこの樋口研究室の室長というわけです。

樋口研究室には、システム構築について常に前向きに成功させたいやる気のあるメンバーが、自分の関心あるテーマや技術、製品について話し合ったり、学習成果を発表していました。

3.樋口研究室はどのように発展してきたのですか?

樋口研究室が発足したのは、1993年10月のことです。バブルが崩壊し企業はリストラを余儀なくされ始めた時期です。

rekishi_q03.jpgそんな時期では危機感のあるIT技術者は、自分はこれから何をすべきなのか、何の役に立つのか?こんな感じで自分の足下を見つめ直したりします。私もそんな社員のひとりだったわけです。そして当然ですが「今後のために、技術者はもっとスキルを身に付けるべきだ」と思いつきました。

その少し前の1992年ぐらいからクライアント/サーバーやネットワーク、OSといった当時のキーワードを解説する書籍を執筆して出版していた経緯があります。

そうしたキーワードを拾って、まずこういうテーマで勉強会をするのはどうだろう、と考え付きました。そしてもしその結果を書籍にするとすれば、参加したメンバーもスキルアップするし、それを読んでくれたお客様も喜んでくれるのではないかと考えました。

すると意外にも、この考えに多くの方が賛同してくれました。そこでいろんなテーマを決めて週2回、ワークショップ(勉強会)を開く活動を1年ぐらい続けました。これが樋口研究室の始まりです。

もちろんこれは業務命令ではありません。あくまで自発的な活動です。今思えば、こういうのを「コミュニティ」と言うんですが、樋口研究室はコミュニティという言葉が生まれる前からコミュニティの活動をしていたことになります。

4.樋口研究室を運営して良かったことや悪かったことはありますか?

いくつかあります。活動を始めて1年間ぐらい経つと、樋口研究室はその当時、私の勤めていた会社の部署を越えて広がっていきました。rekishi_q04.jpg

例えば樋口研究室で出来上がってきた成果物(資料)に対して、ソフトウエアを販売する営業部隊からそれを使わせて欲しいとか、またはお客様のところに言って直接説明してほしいといった声がかかるようになってきたわけです。

これを実際続けてやってみると、他の部署から新しい情報を得たり、具体的な案件に発展したりして、結局のところ私達樋口研究室メンバーのメリットになって返ってくることがわかりました。

このようなアクティビティが、樋口研究室の実績や基盤になってきました。

でもこういうアクティビティから、もっと違ったこともわかってきました。

それは多くのIT技術者は自分の核となるスキルを身に付けたいと考えているということです。しかしそれを身に付けるのは、会社の枠組みや組織にとらわれていては難しいということもわかってきました。

5.樋口研究室に集ったメンバーは何をメリットにして集まってきたのですか?

私は樋口研究室を作った最初のうちは、好きなことを研究するコミュニティだから、面白いテーマがなければ、いつやめても構わないだろうと思っていました。しかし樋口研究室で取り上げるテーマによっていろんなメンバーが入れ替わるようになって、なかなかやめられないものになってきました。

rekishi_q05.jpg樋口研究室の活動をしている時に感じることがあるのですが、最近、ソフトウエアのオープンソース化に見られるように、いろんな人達が集まって議論し、より良いもの作り出すコミュニティが増えてきています。

でも、そういう中でも、自分の仕事の戦略やキャリア、技術の実現可能性などを上手に考え、うまく舵取りができる技術者は、それほど多くないだろうな、ということです。

結局わかってきたことは、優秀な技術者は、いつも自分自身を切磋琢磨していて、仕事のパフォーマンスが上がるように自分をトレーニング(仕事だけでなく考え方や知恵のトレーニング)しながらマネージしているということです。

本当にスペシャリストと言うべき優れた技術者はそういうマネジメント能力、いいかえれば技術だけに特化しないバランス感覚を持っていなければなりません。プログラミングがいくら上手ても、ハードやソフト、製品に関する知識がどんなに豊富でも、それだけではダメで、IT技術や人間性なども含めて、全体のバランス感覚を同時に持ち合わせていないとスペシャリストとは言えない、ということです。

6.樋口研究室は「バランス感覚」の重要性をよく言ってます。それはどうやって身に付きますか?

バランス感覚を身に付けるには、色々な方法があると思いますが、そのひとつは、やはりコミュニティなどに積極的に参加して、自分自身のアウトプットを「出し続ける」こと。この「出し続ける」、「継続する」という作業が重要です。rekishi_q06.jpg

それからバランス感覚を獲得する第一歩は、まず人の意見をよく聞くことだと思います。全部がそうとはいいませんが、技術者は自分が作ったものに対する満足感が得られると、それを他人がどう思っているかということをあまり考えなくなる傾向があります。

こういう傾向を避けるために、自分が良いと思って作った成果物を、まず数多くの人に見てもらってその反応を知ることが大切です。

こういう場としてコミュニティを活用できます。人は自分のミスを指摘されて初めて気付く。また失敗して初めて発見することが多いものです。とくにIT技術者はそういう気付きを誘発しやすいパターンを持っています。

技術者として成長するには、自分自身が成果物を積極的に世の中に発表して、そういう立場に進んで身を置く必要があります。昔は厳しい意見を言う先輩が周りにたくさんいたものでした。若手はみなそういう中で揉まれて強くなっていきました。しかし現在は先輩が後輩を手取り足取り教えている余裕はほとんどないでしょう。

開発のスピードは速くなり人員は減らされて、ひとりぶんの負担はどんどん増えています。だからこそ自分できっかけを見つける。自分への投資と思って、とにかく自分でチャンスをつかみに行く。こういうきっかけを得るためにコミュニティに参加して、自分の好きなアウトプットを出してみることです。

7.変化の激しい時代です。樋口研究室もいつかは解体してしまって無くなってしまうとは思いませんでしたか?

それは何度も思いました。でも例えば、樋口研究室に参加して書籍を書いたり、セミナーで講演したりすると,読者や受講者からたくさんの意見や感想が返ってきます。

rekishi_q07.jpgそうした反応が自分たちにとって大きなプラスになります。これは間違いないと思います。


技術者は、たくさんの開発現場で場数を踏むとスキルが身に付くと言われますね。お客様と直接話し合いをしたり、締め切りに迫られながら開発したり、チームと協調して製品を作ったり、そういう環境から知恵やアイデアが生まれてくるからです。

コミュニティの良さのひとつは、こういう活動に積極的にかかわることによって、そうした経験を、現場の人たちから得られることにあります。

樋口研究室で作成した成果物を外部で発表すると、それを読んだり聴いたりした現場の人たちから様々な反応が返ってきます。時にはお叱りやクレームなどもあるでしょう。でも、それが今のIT技術者に足りない経験でもあります。こういう効果があるので、樋口研究室はなかなかやめられないのですね。
 

8.樋口研究室が今、悩んでいることとかありますか?

悩みというか最近、とても気になっていることがあります。それは基礎スキルをきちんと身に付けていない技術者が増えていることです。特に、なぜその技術が必要になったのか、誰にメリットあるのか、技術の歴史や生い立ちを理解できずに、みんなコンピュータの仕事をしているということです。rekishi_q08.jpg

最近、インターネットやWebシステム構築技術を使ったシステムが盛んに作られていますが、みなさんシステム構築に四苦八苦していて痛い目に会っている技術者が多いということです。最近は、インターネットや書籍、講習会などから簡単に技術情報が得られます。ですから知識の豊富な技術者は多くなってきていると思います。

それなのに、一度何かに失敗してつまずくと、それにズルズルと引きずりこまれていってしまう。結果的に自分のパフォーマンスを劣化させてしまい、スキルアップが出来ないとか自分がどこを目指せばよいかわからない。こういった悩みやトラブルになってきています。上っ面なスキルで勝負するだけで、本当に考えて仕事する技術者が少なくなってきているからでしょうか・・・。

技術はそれがどういう仕組みで動いているか、その歴史や成り立ち、アーキテクチャーといった基本的なことを知らないと、今は大丈夫でも、ずっと将来太刀打ち出来るかというと、そうではありません。自分の仕事の品質アップを目指したい人は、それがなぜ必要なのか、誰にメリットあるのか、そういう価値の「原点」に興味を持って仕事に取り組んでいってほしいです。
 

9.今後、樋口研究室はどのように進化していくのでしょうか?抱負をお聞かせ下さい。

樋口研究室がスタートしたのは、1993年です。運営を始めて、もう17年になります(この記事を書いている時点)。これもみなさんのご支援のおかげだと感じています。

rekishi_q09.jpg樋口研究室コミュニティは、今でも進化しています。

樋口研究室をスタートさせた頃は、メインフレームとクライアントコンピュータの連携アーキテクチャーを題材に、様々な成果物を作りました。その後、クラサバやネットワークコンピューティング、コラボレーション、Webアプリケーションなどコンピュータのインフラやアプリケーションの技術へとカテゴリを深めていきました。

2000年に入って、テクニカル系に加えて、マネジメントや人材教育、コーチング、リーダーシップなどヒューマン系の話題へと、内容を広げていきました。

2007年6月には、樋口研究室の企業様向け事業を法人化(合同会社)して、合同会社ビューチェンジにしました。また2010年7月には、合同会社から株式会社ビューチェンジに組織変更しました。法人になりますと、個人のお客様だけでなく、企業にお勤めのたくさんのみなさんに、私達の作成した成果物を使っていただけるようになるからです。

現在、みなさんに活用していただくことが出来る樋口研究室の成果物を、このサイトの「サービスメニュー」にまとめてあります。ご覧になられて、使えそうなのもがあれば、ぜひご活用いただけますと嬉しいです。