心の健康を守る「泥沼からの脱出ポイント」。

1.全く余裕の無い管理職やリーダー

こんにちは。樋口研究室の飯田佳子(いいだよしこ)です。

仕事では自分ではどうすることも出来ない場面が山ほどあります。コンピュータの仕事でも、営業は売る事だけ、上司は管理する事だけ、開発者は技術の事だけを考えて、仕事していることも多いと思います。

そんな仕事の現場では、心の健康を乱してしまう(うつ病や不安、適応障害になってしまう)方も、たくさん出てきます。そしてその原因のほとんどは、仕事の現場にあります。

その原因を改善するミッションは、管理者やリーダーにあります。でも顧客の予算や納期にストレス受けながら仕事をしている管理者やリーダーは、心の健康の維持や管理をする余裕は全くありません(ご自身も心を乱しているぐらいですから)。だから私のようなITコーチが、心の健康を乱さないように、色々な手法や考え方を開発して、みなさんのパワーが落ちないように支援する機会が増えてきているのです。

私は今まで心の健康を乱す可能性のある現場をたくさん見てきました。そういう経験から私は心の健康維持をミッションとしている管理職やリーダーの方に「泥沼からの脱出ポイント」という考え方をお伝えしています。今からこの概要をお話しします。この考え方は、これから管理者(課長)やプロジェクトのリーダーになる方に、ぜひ頭の中に入れておいてほしい考え方です。

2.泥沼状態の3レベル

仕事の現場で泥沼に入っている方の状況(火が吹いているとか疲弊している状況)を分析すると、ほぼ以下の3つのレベルにわけられます。dassyutu01.jpg

■レベル1
このレベルは、悪化しているご本人が自力でなんとか泥沼から脱出できる状況にあるレベルです。このレベルでは、本人自身で今の状況を分析できて、自分の過去の経験や工夫を生かして泥沼から乗り切ることが出来ます。

■レベル2
このレベルは、ご本人が専門家の援助をもらうと、泥沼から脱出可能な状況です。このレベルでは、ご本人に不足している解決策や支援を、専門家の助言や補助をもらいながら補足していけますので、回避できます。

■レベル3
このレベルは、ご本人のパワーでは、もはや泥沼から脱出できない状態です。ご本人に現状認識する知力や体力が不足しています。多くの場合、本人の周りの同僚やチームメンバーの知力や体力も消耗しています。

私の経験から言えば、ITコーチングを提供して、泥沼から抜け出す支援が出来るのは、レベル1とレベル2です。こういうレベルではご本人にパワーが残っている状態ですので、疲労していても、回復を目指すことが出来る良いケースといえます。

しかし管理職やリーダーの方が本当に焦点を当てないといけないのは、レベル3の状態です。ご本人だけでなく、周りの人間のパワーも消耗している状態では、会話とか手ほどきとか、そんな流暢なことを言っている場合ではありません。そのため脱出コーチングは、レベル3の状況をどのように乗り切るか、そこがポイントになってきます。

3.管理者やリーダーが泥沼に手を差し伸べないといけない

まずレベル3の状態では、管理者やリーダーが、以下のような3つの観点に注意しないといけません。dassyutu02.jpg

(1)管理者やリーダー自身が泥沼にはまり込んでいないか

管理者やリーダーがレベル3にはまっていると、完全にアウトです。おぼれている人がおぼれている人を助けることは出来ません。

(2)第三者パワーを利用できるか

脱出作業には仕事に関係の無い第三者のパワーが必要です。なぜか?スキーをして新雪に足を取られて埋まってしまった事を考えて下さい。初めは膝下ぐらい埋まっているだけですが、もがけばもがくほど首まで埋まってしまいます。私を助けに来た人も助け出そうとしてくれますが、同じく雪に埋まっていきます。結果的に空からくる救助隊に助けてもらうことになります。この「空から来た」救助隊が第三者のパワーです。会社ではこの救助隊は組織や体制のしがらみの無い精神科の医師が第三者のパワーに相当すると思います。診断書を書いてもらって仕事を休ませないと(心の健康の悪化原因から遠ざけないと)ご本人の状況は悪化するばかりです。

(3)心を健康を乱した本人の復帰場所を確保できるか

管理者やリーダーは、脱出したご本人が生きる価値や存在を見失わないようフォローする手段を考えないといけません。ご本人は会社を休むと一瞬、自分の存在価値を見失って意欲喪失したりする場合があるのです。管理者は「脱出した後でも戻る場所は必ずある」これを約束してあげて安心させてあげることが大切なのです。

4.回復には時間がいる。急ぎすぎてはいけない。

dassyutu03.jpg一旦、心の健康を害すると、ご本人が正常な心や体に戻るまでには、ある程度のリハビリ期間が必要です。十分に回復していない状態で会社に戻ると、再発することもありますし、回復に数年という長い時間がかかることもあります。

管理者やリーダーも、ご本人の回復を忍耐強く待てないとなかなか回復しません。しかし現場の仕事やプロジェクトを回している管理職やリーダーが、この忍耐力をつけるのは難しいかもしれません。顧客の予算や納期にしばられているでしょうから・・。

だからなおさら、心の健康を害した人は、現場から遠く離れたところで管理しないと回復が難しくなるのです。

5.前兆を見つけて、素早く脱出の方法を考える

結果的に管理者やリーダーは、泥沼にはまった人を早く見つけて、出来るだけ迅速に、そこから脱出させるのが重要なのです。

そのためにも、仕事の現場では、心の健康を阻害する原因や傾向を、メンバー全員で分析して、それに備えて色々な対策を考えておくことが重要になってきます。

例えば仕事やプロジェクトが始まる前に、心の健康について、しっかり勉強して、どんな時に心の病になりやすいのか、どういう人が心の病の前兆にあるのか、しっかり事前に知識を持っておくことが大切になってきます。

心の健康を阻害する原因は、仕事の現場にあります。現場でたくさんの心の病気の患者が出てくると、まず管理者やリーダーの責任が問われるのは当然ですが、みなさんも心の健康について十分に認識していることが重要なのです。

これは会社のリスクであり、ひいては社会の損失です。心の病を増やさないように、管理職やリーダーは、部下やメンバーに対して、そして自分自身に対して、十分な心の健康管理の知識を持っていないといけない時代になってきています。十分に注意するように気を付けて下さい。

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